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児童手当の所得制限-支給金額増加のための4つのチェックポイント

アイキャッチ画像(赤ちゃん、小学生、学生)

児童手当には所得制限があります。所得限度額以上の所得がある場合にはお子さん1人あたり一律5,000円と給付額が少なくなります(特例給付)。

  • 特例給付認定通知書が来たけど、どれくらい所得制限を超えているの?児童手当を受給できる方法はないの?
  • 今は児童手当を受給できているけど、あとどれくらい所得が増えると所得制限を超えるの?

と思った方は要チェックですよー!

児童手当の所得制限の概要

児童手当は中学生以下のお子さんがいる家庭にお子さん1人あたり月額10,000円〜15,000円が支給される制度ですが、所得制限が設けられており所得限度額を超える場合はお子さん1人あたり月額5,000円の支給になります(詳細は『児童手当の申請手続と受給金額 いつまでに?何が必要?』参照)。

この所得限度額を超える家庭への支給を『特例給付』といいます。特例給付については2017年度は引き続き実施されますが、廃止の議論があり今後いつまで続くかは分かりません。

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は20日分科会を開き、社会保障制度の効率化などについて議論した。財務省は中学校卒業までの子どもに支給する「児童手当」をめぐり、所得制限を超える世帯を対象に子ども1人当たり月5000円を支給する「特例給付」を廃止し、浮いた財源を保育の受け皿確保に充てることなどを提案。政府が待機児童解消に向け、6月に策定する新計画に反映させたい考えだ。
(引用元:毎日新聞2017年4月20日 19時52分『財政審「特例給付」廃止を提案 子育て対策充当に』

児童手当の金額は受給者側が計算したり、申告したりする必要はありません。まず、所得税の確定申告(していない場合は年末調整)または住民税の申告で提出した情報を基にお住いの市区町村が住民税の金額を計算します。児童手当の金額は、住民税の計算に使われる情報を基にお住いの市区町村(公務員の方は勤め先)が決定するという流れになっています。

誰の所得で判断するの?

お子さんを養育している保護者のうち主たる生計の中心者、つまり一般的にはパパとママのうち所得が多い方です。共働きであっても1人の所得で判断されるというところがポイントです。

認可保育園の保育料、幼稚園の保育料補助金や高校の授業料補助金など子どもの養育費に関する保護者の負担額は世帯の所得によって決まるものが多いのですが、児童手当は違います。この所得制限の判定方法については議論になっていて、今後は変更になるかもしれません。

財務省は所得制限の算定方法についても見直しを提案。共働き世帯の増加を踏まえ、世帯の中で最も多く稼いでいる人の所得のみで判定する現行制度を変え、世帯の合算所得で判定するよう求めた。財務省は「世帯全体で所得が同じなのに、手当を受けられる世帯と受けられない世帯があるのは不公平だ」と説明。
(引用元:毎日新聞2017年4月20日 19時52分『財政審「特例給付」廃止を提案 子育て対策充当に』

いつの所得で判断するの?

児童手当は6月~翌年5月分を前年の所得により決定します。例えば、2017年6月~2018年5月の児童手当は2016年の所得で決定するということです。

児童手当の所得限度額っていくらなの?

所得限度額は扶養親族等の人数で変わります。
児童手当の所得限度額一覧

所得税・住民税の計算では扶養控除の対象にならない16歳未満の子どもも児童手当の所得限度額の計算では扶養親族等の人数に含めます

扶養親族等の人数は前年の12月31日時点の人数です。例えば、2017年6月~2018年5月の児童手当は2016年12月31日時点の扶養親族等人数で所得限度額が決まります。2017年に生まれたお子さんにも児童手当は支給されますが、所得限度額の計算ではその子は扶養親族等の人数にカウントされません。

所得限度額と比べる所得の金額っていくらなの?

所得限度額と比べる所得の金額は、所得額(以下①)-控除額(以下②)-8万円です。

①所得額

所得額は以下の金額の合計です。確定申告(していない場合は年末調整)で申告した金額により計算されます。

聞きなれない言葉が多くてよくわからないなぁという方は、勤め先からの給与や自営業の利益の他に不動産の売却益やFXなどの先物取引による利益なども含まれるのだなとイメージしてもらえるとよいかと思います。ちなみに、株の譲渡益は児童手当の所得制限には影響ありません。

  • 総所得金額(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、雑所得、一時所得(いずれも総合課税のもの))
  • 退職所得金額(確定申告したもの)
  • 山林所得金額
  • 土地等に係る事業所得等
  • 長期譲渡所得
  • 短期譲渡所得
  • 先物取引に係る雑所得等
  • 条約適用利子等・条約適用配当等

②控除額

控除額は以下の金額の合計です。こちらも確定申告(していない場合は年末調整)で申告した金額により計算されます。

雑損控除:申告額の全額
本人、配偶者、親族等(同一生計)が災害や盗難により生活に必要な資産が損害を受けた場合、その一部の金額。
医療費控除額:申告額の全額
本人、配偶者、親族等(同一生計)が一定額以上の医療費を支払った場合、その一部の金額。
小規模企業共済等掛金控除:申告額の全額
本人が小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛け金を支払った場合、その全額。
障害者控除:27万円 or 40万円/人
本人または扶養親族等が障害者に該当する場合。障害の程度により控除額が異なる。
寡婦(夫)控除:27万円 or 35万円
本人が夫・妻と離婚または死別していて一定の要件を満たす場合。
勤労学生控除:27万円
本人が働いている学生で所得が一定額以下の場合。

所得の金額を確認してみよう

会社勤めで確定申告をしていない場合

源泉徴収票を見てみましょう。
源泉徴収票のサンプル
赤い丸がついている「給与所得控除後の金額」が『①所得額』になります。

確定申告をしている場合

所得税の申告書を見てみましょう。
税務申告書第一表の所得額
『①所得額』のうち総所得金額は第一表の所得金額の合計欄の金額です。
税務申告書第三表の所得額
『①所得額』のうち総所得金額以外の金額は第三表の所得金額の欄を見ればわかります。短期譲渡所得・長期譲渡所得の金額は特別控除適用前の金額と明記している自治体もあるので、気になる場合は市区町村の窓口で確認してみましょう。

所得制限を超えている場合の4つのチェックポイント

所得制限を超えている方は以下のポイントをチェックしてみましょう。

チェックポイント1:16歳未満の扶養親族等に漏れがないか

16歳未満の扶養控除は廃止されているため16歳未満の扶養親族等の人数の申告は多くの人にとって税額に影響がありません(住民税を課税するかどうかの判断には影響します)。しかし、児童手当の所得限度額には影響があります。1人あたり38万円限度額が増えますので、漏れがないかどうか確認しましょう。

チェックポイント2:配偶者控除の申請に漏れがないか

1年間の所得の金額が38万円以内の場合は配偶者の所得から控除が受けられます。共働きのご家庭は産休・育休を取得した年は要注意です。産休や育休で仕事を休んだ期間は健康保険や雇用保険から一時金や給付金が出ますが、これらの収入は非課税です。所得には含まれません。休業のタイミングと期間によっては一時的に配偶者控除の対象となる場合があります。

チェックポイント3:控除額に影響する項目に漏れがないか

申請を忘れやすいものとしては別居の扶養親族等があります。親族に生活費を仕送りしている場合は税額を計算するうえでは「同一生計」と考えられ、その親族の所得の金額が38万円以内である場合は扶養控除が受けられます。そのほか、障害がある場合や寡婦(夫)に該当する場合の申請ができているかどうかも確認しましょう。

チェックポイント4:医療費控除の申請に漏れがないか

本人、配偶者、親族等(同一生計)が1年間に支払った医療費の合計が10万円(所得が200万円未満の場合は所得の5%)を超える場合に所得から控除が受けられます。出産費用も医療費控除の対象となりますので、普段はあまり医療費がかからないというご家庭でも、出産した年は医療費控除が受けられる可能性があります。

医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。

実は所得制限を超えていなかったことが分かった場合

まずは所得税、住民税の申告内容を直してから、お住いの市区町村(公務員の方は勤め先)の児童手当の担当部署に所得の金額が変わったことを届け出ましょう。

チェックポイント1:16歳未満の扶養親族等のもれの場合

この項目は所得税の金額には影響しないので、お住いの市区町村の税金担当部署で住民税の更正の請求をします。

その他の場合

所得税の金額が変わるので税務署で手続します。確定申告をしていない場合は還付申告、確定申告をしている場合は更正の請求をします。

いつまでさかのぼって直せるの?

所得税の還付申告は所得があった年の翌年の1月1日から5年間、所得税・住民税の更正の請求は所得があった年の翌年の3月15日から5年間できます。現時点では2012年以降の所得の還付申告、更正の請求ができるということになりますね。

所得制限を超えそうな場合に有効な3つの対策

対策1:小規模共済を利用する

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主の方、中小企業の役員の方のみが加入することができる公的な退職金の共済制度です。個人事業を廃業したときや会社の役員を退職したときなどに、毎月掛け金として積み立てていたものを受け取ることができます。

途中解約すると元本割れする可能性がある、掛け金の減額が難しいといったデメリットもありますが、支払った掛金の全額が所得から控除できるなどの節税効果を享受しながら退職後の資金を貯められる制度なので、利用できる方は検討してみるとよいと思います。

医療費控除などとは異なり、所得から控除できるのは本人の分だけなので注意が必要です。

対策2:確定拠出年金を利用する

確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金の1つです。2017年1月から60歳未満のほぼすべての方が利用することができるようになりました。

確定拠出年金拠出限度額
(引用元:厚生労働省HP 『確定拠出年金の対象者・拠出限度額と他の年金制度への加入の関係』

途中解約ができず、60歳までは受け取れないといったデメリットもありますが、こちらも支払った掛金の全額が所得から控除できるなどの節税効果を享受しながら老後の資金を貯められる制度なので、検討してみるとよいでしょう。

こちらも医療費控除などとは異なり、所得から控除できるのは本人の分だけなので注意が必要です。

対策3:退職金をもらう場合は「退職所得の受給に関する申告書」を提出する

退職や転職により会社などから退職金をもらう場合は「退職所得の受給に関する申告書」を提出するようにしましょう。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、退職金を支払う側で退職所得に対する所得税・住民税の金額を計算して源泉徴収をするため、退職金を受け取る側で確定申告をする必要がなくなります。医療費控除など他の要因で確定申告をする場合も、退職所得の申告はしなくてよくなります。

確定申告をする必要がない退職所得は児童手当の金額を決めるときに所得には含まれません。

児童手当の所得制限に影響のない節税対策

以下についてよく節税対策と言われていますが、児童手当の所得制限には影響ありません。

  • 民間の生命保険や医療保険、介護保険、個人年金保険への加入(生命保険料控除)
  • 国民年金基金への加入(社会保険料控除)
  • 住宅ローン減税(所得税から控除しきれない場合に一定額が住民税から控除される)
  • ふるさと納税をはじめとする寄付金控除

まとめ

児童手当は所得制限を1円でも超えると一律5,000円/月の支給になってしまいます。うちの所得って微妙なラインだなと思った方は試してみてくださいね。

特例給付だったけど児童手当が受給できるようになったという方はコメント欄やfacebook・twitterのメッセージで教えていただけると嬉しいです!!

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